天才と仏像とライブ
僕が今まで知り合って
「こいつは天才だ!」
と思った人が何人かいる
その筆頭が彼だ
彼は音楽、というよりバンドとライブパフォーマンスの天才
僕たちの出会いは警備のバイト
どっちが先にいたのかは忘れたけど、年下でまだ十代だった彼が先輩だったかな
僕は陰キャなのに、なぜか陽キャの人と仲良くなることがあった
彼もそのひとりで、とっても陽キャ
多分クラスでも一番目立つカースト頂点のリーダータイプ
頭もいいしスポーツ万能
裏原とかいっちゃうおしゃれさん
僕がもっていない多くをもっている人だった
バイトは交通誘導警備のガードマン
ちょい悪で見た目も真面目には見えないので、駐車場とか真面目な現場には送れない
けど、土木工事とかの大変な現場では重宝された
荒くれ者が多い現場でも現場監督さんや職人さんに気に入られ
国道の片側通行や交通量の多い交差点みたいなハードな現場でもイキイキとこなす
特にハードな現場では誰と一緒に組むのかチームが大切となる
僕はなぜか「ハードな現場担当」のバイト仲間グループと仲良くなり、多くの現場で一緒になった
彼はもちろんリーダー的ポジション
そのうち、彼のライブに誘われた
生まれて初めてのライブだったかもしれない
ハードコアというかなんとも激しい音楽で
ライブ会場では人が飛び、モッシュピットができ、人が団子になっているところで暴れるので、時に流血もあった
今まで知らない別世界
意外と楽しかった
それから、彼がライブをやるときは誘われるようになり、ライブに遊びに行くのが楽しみになった
友人とは言っても、サシで遊んだことは多分一度もない
数年たってお互いに警備のバイトをやめても関係は続いた
あるとき、僕は京都や奈良の寺社仏閣巡りにはまった
そして、彼はなんと小学生のときから仏像にはまっていたことが判明
その時彼は、出会った当時のバンドではなく、違うバンドを組んでいた
そのバンド仲間も京都が好きで、僕たちは冗談半分でチーム「都のかほり」を結成
もちろん遊びでそう言っていただけだけど
バンドも本格的に活動をはじめていて、ライブツアーもおこなうようになっていた
ツアーの時は必ず京都を組み込み、1日か2日くらい時間をつくる
そしてバンドメンバーではない僕も、機材車運転+なんちゃってローディーとして一緒にいくことが多くなった
はじめてのライブ会場ではリハに参加し、マイクのボリュームとかも確認する
それ以外僕だけ自由なので、寺巡りや観光を楽しむ
帰ってきて彼らのライブを堪能する
バンドメンバーは4人
ヴォーカル・作詞・作曲・演出が彼で、ギター・ベース・ドラムの編成
みんなそれぞれ独特な個性があった
ギターは、ライトハンド奏法など駆使する技術派でありながら、叙情的に聴かせる静かさと激しさを併せ持つ、穏やかで優しい青年
阿修羅が大好きで、このふたりが都のかほりの主要メンバー
ベースは、ファッションも髪型もとっても個性的で、演奏中はほぼトランス状態
性格は静かだけどいたずら好き
ドラムは、両親ともに音楽教師の子として育ったエリートで、何も知らなければ真面目な好青年
バンド前期は、まだ十代のころの名残もあり激し目の音楽
バンド後期になって、激しさではなくオルタナティブというか感情に訴える楽曲がメインとなる
このころトリで演奏する曲は20分くらいあって、ちゃんと聞くとまるで一本の壮大な映画を見終わったかのような感動と疲労を覚える
ヴォーカルとそのパフォーマンス、3人の個性が前面に出た演奏、独特な自分たちだけの世界を構築しきったライブ
このころの彼とバンドはまさに神がかっていて、ライブで涙があふれてきたのはこのときだけかもしれない
彼のヴォーカルは静かに祈るように聞かせるところもありながら、激しいパートでは魂からの叫びをぶつけ、ぶつけてもぶつけてもまだ足りないと言わんばかりのパフォーマンス
観客はみな引き込まれ唖然とする
そして静かに流れる最後には、漂う安心感ともいえるような余韻
演奏後には観客もみなぐったりとしていていたり、涙をみせながら笑っていたり、ただ曲を聴いた、ではすまされない体験をしていたように思う
そういえば彼が一番好きな仏像は、不動明王のような激しいものではなく、穏やかな弥勒菩薩半跏思惟像だった
インディーなライブはいろいろいったし、有名な海外アーティストの来日公演とかもいったけど、彼と彼らほど感動したライブはないし、文句なしで天才だと言い切れた
この頃の僕は少し心が不安定な時期でもあったし、仏像に感動してお庭に感動して絵画に感動して、感情が動きやすい時期であったことも大きいだろう
理由は特にないけど、次第に連絡を取らなくなり、会わなくなって20年くらい経つ
ふと彼の名前を検索しても出てこないし、今は表舞台に立つつもりがないんだろう
あのような天才が音楽を続けていないことを残念に思いつつ、彼ならどこでも元気で自分のペースでやってそうだなとも思う
Youtubeにその20分越えの曲が上がっていたけれど、おそらく関係者がアップしたものではないし、多くの人に聞いて欲しい気持ちはあるけどリンクも張らない
久しぶりに彼の音楽を聞きながら
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