警備員のバイト
僕は数多くの仕事をしたけれど、友だちというか、仕事以外でも会うようになる人が一番多くできたのが、警備員のバイトだった。
僕が21歳から23歳くらいまで、途中他のバイトをしたりもしたけれど、通算2年くらい続いたバイト。途中お手当がつくというので「交通誘導警備2級」の資格をとり、現場バイト兼指導員として働いた。
そこで出会った奴らは、濃い奴が多かった。
でもまずは、警備員のお仕事をご紹介しよう。
まず警備のバイトというのは、簡単に言うと、道路の工事現場にいるガードマンだ。
正式には「交通誘導警備」という業務に従事する人たちだ。
ほかにも「雑踏警備」という、お祭りや何らかのイベントがあるときに、会場や道路の整理や警備をするガードマンもいる。
僕たち一般バイトの現場はこのふたつ。
社員さんとかは「施設警備」という、デパートの中の警備員とか、会社やビルの警備員とかもやっていた。
セコムみたいなホームセキュリティ用の人も社員さん。警備先で不審者とかがあると、深夜でも現場に急行する人たち。
僕たち一般バイトの仕事の9割は工事現場だ。残りの1割くらいが駐車場など。
駐車場の警備は、パチンコ屋さんの駐車場とかスーパーの駐車場で、お客さんの出入りとかを整理する。
こちらはガラの悪い若いバイトがやることはまずなく、おじさまやおばさまバイトたちの出番だ。
工事現場のガードマンは、「片側交互通行」と「通行止め」が主な仕事だ。
道路のアスファルト舗装の工事とかだと、道路を全面通行止めにしたり、かなり長い距離が規制区域になるので、交通誘導も大変。
1車線しかない道路だと通行止め。しかも道路の端から端まで舗装する場合は、自転車や下手したら歩行者も通れない時間がある。警備員は警察みたいな権力はないから、皆様にはお願いすることしかできない。結構無視して突貫するおじさんたちもいて、舗装を敷いたばかりのまだ固まっていないアスファルトの上を走り抜ける自転車おじさんもいた。職人さんたちの「うわマジかよ」という顔を見て急いで走り去る自転車おじさんと、顔面蒼白な僕たち警備員。
通行止めはある意味もっとも辛い。
現場にもよるけど、ヒマなのだ。
何もやることが無い。ヒマでヒマでしょうがない。
工事現場のすぐ前で通行止めしているならまだいいけど、その反対側の入り口とかだと、工事なんてまるで見えない。それなのに、「通行止め」の看板ひとつ立てて、ガードマンが立っている。
暇つぶしに工事の様子を見ることも出来ない。
音楽を聴いたりとかはもちろんだめ。
ただ立ってないといけない。
時間の感覚が狂う。1時間経ったと思って時計をみたら、10分も経っていない。
特に冬場の底冷えは辛くて、うろうろ動き回るしかない。
一方、ヒマじゃ無い通行止めは、メンタルが強くないとだめ。
かなり文句を言われるし、迂回路の説明もする。
無視して突っ込んでくるおじさんおばさんたちもいる。
なかなかに精神的にハードなのだ。
片側交互通行は通行止めとは違う大変さで、常に全方向に注意を払い、状況に応じて臨機応変に対応しなければならない。
片側1車線の道路で1車線は工事をして通れないので、車には残った方の車線を通行してもらう。
信号の代わりに規制区域の両端にガードマンがそれぞれ立ち、旗やニンジン(誘導棒)で「止まれ」「進め」の合図をしたり、相方とやり取りをする。長い現場やカーブの現場だと相方が見えないので、無線でやり取りをしたりもする。
交通量がもともと多い道路でこれをやると、渋滞が発生してしまうこともある。
さらに規制区間が長いと、途中に脇道があったり、歩行者も多かったり、工事車両の出入りも多かったり、信号がからんだり、かなりハードな現場となる。
ハードな片側交互通行の現場では、多少ガラが悪くてもイキのいい若いガードマンが大活躍できる。若い=動きも機敏で判断も速く、刻々と状況が変わる現場ではとにかく若い人が求められる。交通量が多いと渋滞も発生するから、ドライバーさんたちからのプレッシャーにも耐えられる=ガラがわるい若いバイト、となってくる。
もちろん一番いいガードマンはガラが悪くなく真面目で、だけど機敏に臨機応変に対応できる若いベテラン。でもそんなガードマンはほとんどいない。
ヒマな現場だと、職人さんたちの仕事をずっと眺めている。
そのうち段取りも覚えてきて、途中から「あー今日は残業っぽいなー」とか分かるようになる。で、ヒマな現場はかなりヒマなので、職人さんの竹箒を借りて、現場に散らばった土や砂を綺麗にしたりする。
ここまでならガードマンの本来の仕事さえちゃんとしていれば問題ない。
本来の業務範囲ではないけれど、やるのが当たり前みたいな空気さえあった。今はダメかもしれないな。
でも、職人さんが大変そうにしているときに気を使いすぎて手を出してはダメだ。
僕も一回やってしまって、しかもそのせいで怪我をしてしまった。
現場監督さんに病院まで連れて行ってもらい、本来の業務じゃ無いから労災どうなるとか、いろんな方にとても迷惑をかけてしまったことがある。
この仕事に限らず、職務範囲外に手を出して絶対にダメなのだ。特に素人は危険すぎる。
当たり前のことを身をもって学んだ出来事だった。
僕は片側交互通行の現場が好きだった。仕事が大変なほど時間が早く流れ、あっという間に1日が終わる。それに意外と楽しいのだ。もっともチームで仕事をすることになるので、チームメンバーにもよってしまうけど。
僕はガードマンの指導員の仕事もしていたので、事務所にいるときにごくたまにヘルプに行ったりもした。
大変な現場が回っておらず渋滞のクレームが入っているとか。当時はバイク移動をしていたので現場に急行し、混乱した現場を整然と整えていく。なかなかに大変だけど面白い。
他にも、急に体調不良のガードマンが出たとか、漏水とかの緊急工事が入ったとか、そういうときにも現場に急行したりもした。
指導員というのは、各現場を見回って、各ガードマンさんたちが問題なくやれているか、服装がだらけていないか等確認して、場合によって指導する。
でもメインの仕事は、新人研修だ。
ガードマンはある程度の研修を受けないと現場に立てない。
法律で決まっているのだ。
だから新人さんが来ると、必ず研修をする。
だから僕は、数多くのガードマンさんと接してきた。
僕がいた会社では、一部日払いも可能だったこともあり、いろいろな人が登録に来た。
18歳から上はいくつだろう。70代くらいはいたかな。
9割以上は男性だけど、たまにおばちゃんとかギャルとかもいた。
若い人の多くは真面目そうな人。ガラが悪いのはごく少数だった。
でも、片側交互通行とかの激しい現場は、ガラが悪い若いのが一番安心して任せられる。
お客さんの多くは道路工事の各業者さん。
水道屋さん、下水道屋さん、ガス屋さん、舗装屋さん。
たまにケーブルテレビ屋さんとか、新築工事。
地面の工事じゃなくても、電線とか、クレーンで資材を搬入するとか、車やクレーン車を道路に停めて作業する場合はガードマンがいる。
お客さんも現場系がほとんどなので、ガラが悪い若いスタッフでも指名をもらう人がいた。
お客さんがガードマンを気に入ると、「次もあの子お願いね」とかご依頼をいただく。
たまにギャルガードマンとかがいると、意味も無く指名が入ったりもした。
仕事の量とガードマンの量が釣り合っていればいいけれど、仕事の量の方が少ないときは、働きたくても働けない場合もある。
工事期間が長い現場で、お客さんから「あのガードマンはダメだ、明日からもっといいのよこして」とか言われなければ、その現場が終わるまでは安泰。毎日仕事の始まりと終わりを電話で報告して直行直帰もOKになる。
それ以外はだいたい夕方仕事から帰ってくると、明日の現場はここね、と事務所の割り振る係の人とやり取りをする。
大変そうな現場だと「えー、まじっすか」「頼むよー」「メンバー誰っすか」みたいなやり取りで明日の仕事を決めていく。
そして大変な現場が一緒になることが多いと、自然と仲良くなっていくのだ。
そんな数多くの老若男女の中で、特に仲良くなった人や記憶に残っている人を何人かご紹介しよう。
とここまで書いたらそれなりの文字数だったので、今回はここまで。
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