京都にはまったきっかけ

僕はあるときから京都にはまり、月に1〜2回行くのを2年くらい続けていた
京都にはまるまでとその後では、僕の感性は大きく変わったと思う


それまでの僕は、貧乏育ち・キリスト教家庭・高卒フリーターだったこともあり、日本文化とは無縁だった
十代後半からはむしろアメリカが好きで、部屋には星条旗を飾り、ウエスタンブーツを履き、フリンジの付いたスェードのジャケットや皮のチャップスといういでたち、レイバンのサングラスをかけ、アメリカンバイクにまたがり、エルビスのCDを聴いていた
まあ飽きやすいので、そこまで濃いアメリカン状態は少しの間だったけど


26歳、ある日の夜、早朝と言うよりも深夜に眼が覚めた
目を閉じても眠りにつくことができず、ドライブが好きだった僕は、行き先も決めずに真夜中の町を車でさまよいはじめた


国道16号線をまっすぐ進むと青看板に「横浜」とあらわれた
この青看板と自分の無知さが、ある意味人生を変えることとなった

埼玉県に住んでいた僕は、神奈川とはほとんど縁がなかった
アグレッシブでアメ車が好きな友達は、アメ車関連のお店やイベントへよく横浜に遊びに行っていたけれど、僕にはほとんど知らない土地で土地勘も無い

16号を進むうち、青看板に「横須賀」があらわれる
「横浜といえば横須賀?横須賀っていったことないし行ってみるか」と漠然と目的地を決めた
当時まったく学もなく無知だった僕は、横須賀の場所を知らない
横浜からまっすぐいくと海のほうで江ノ島とか横須賀とかそっちのほう、と思っていた
江ノ島は行ったことがあるのでちょっと知っている

16号から国道1号線にぶつかると、迷わず1号線に乗り換えた
僕は三浦半島の存在を知らなかった
後に三浦半島に住むことになるんだけど、このときは存在すらしらない

進めど進めど、横須賀が出てこない
江ノ島も出てこない
車はいつしか峠道を走っていた
「箱根?」
まーいっかとそのまま進む
再び目的地が未定となった

峠をくだり海が見える道を走っていると、空が明るくなってきた
しばらく経つと道が渋滞
目的もない僕はイライラもせずまっすぐ進む
青看板に目をやると「名古屋」
名古屋!聞いたことある!
信長・家康・秀吉のあれね


何日か前、京都旅行から帰った友人Y君にお土産をもらった
龍が描かれたた小さなキーホルダー
そのとき「京都マジ良かったよ!」と絶賛していたのを思い出す

名古屋がみえたということは、京都もすぐだ!
京都に行ってみよう!
盛大な勘違いをしていたのに気づくのは、だいぶ後になってからだった

静岡を走る車
走れども走れども静岡
静岡でかすぎ
なかなか名古屋につかない
うすうす気づいていた
「めっちゃ遠くない?」
でも、そのときはもう意地になっていた
目的地は京都に決めたのだから
横須賀はあっさりスルーしたくせに


そのうち「京都」の青看板があらわれる
やっとここまできた
まだ100km以上あるけれど

名古屋を超え、またも山越えするとは思わなかった
日本山すぎ
もっと若い頃、北日本をバイクでぐるっとひとり旅した僕は、日本はほとんど山で、人間はちっさい平地に密集して住んでいることを知っていた
それは東海道でも変わらなかった
めっちゃ山
それと海

忍者がいそうな地名を過ぎてしばらくいくといよいよ目的地「京都」
修学旅行で来たときは、まったく興味がなかった京都
その日に来日していたゴルバチョフさんが、同じく京都に来ていたことしか覚えていない


人生二度目の京都
時間は夕方
ふと思い出すと、明日はたしか居酒屋バイト時代の友人S君と久しぶりに遊ぶんだった
帰らないと
その前にちょっとだけ京都の町をドライブしよう

地図も持たず、あてもなく京都を走る
目に入ったのは、立派な土壁?かなんかで囲まれた場所
「おー、京都!」
「なんていうお寺さんか知らんけど、なんかすごいなー」
僕は神社とお寺の違いも知らなかった
なんで壁に瓦屋根が付いてるんだろう
この壁の向こうにはなにがあるのだろう
でも、なんだか別世界で、雰囲気だけでも感動
ジーンズとウエスタンブーツで未知の空気を少し味わう
今度はゆっくり来よう
今日は帰ろう


京都滞在は1時間くらい
僕は来た道を戻り始めた
なぜか当時の僕の辞書に「高速道路」という文字はなかった
途中道の駅やコンビニで休憩しつつ、無事に家に帰り着いた
若かったから出来たこと
下道で休憩しながらのんびり行くと、片道12時間以上
今やったら過労運転で違反だし、高確率で事故りそう


帰ってから数日後、僕は再び京都を訪れる
相変わらず高速道路という文字をもたない僕は、ここから数年、この道を何度も通ることになる
ウエスタブーツは、もう履いていなかった


後で知ったことだけど
あの壁は、お寺さんでも神社でもなく、御所だった

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