クレジットカード
もうすぐ半世紀生きるっていうのに、あの頃考えていた“大人”になんてなれていなくて、「自分が大人になる」なんていう幻想に気づいたことが、50年の成果だろうか。
あの頃大人だと思っていた人たちの多くは、今の僕より年下なのに、記憶の中のみんなはるかに年上にみえる。
それでも、ちょっと甘い評価をすれば、自分が少しだけ“大人”かもって、思えるときはいくつかあった。
「人を許せるようになった」とか、「感情をコントロールできる」とか、「視野が広がった」とか、「社交的になった」とか、そんな高尚なことではなく、もっと日常的な、ささいな出来事。
そのうちのひとつは、クレジットカードを作ったとき。
初めて作ったのは23歳だったかな。でもこの時は別に大人になったとは思わなかった。
バンドを始めて電子ドラムを買うときに、楽器屋さんでついでに作らされた。
限度額はたしか10万円。
しかっりしてそう、とよく言われる見た目に反し、発達障害グレーゾーンの僕は散財した。
だって現金がなくても買えちゃうから。
返済が焦げ付き消費者金融にまで手を出した。
フリーター低収入不安定な僕は、一気に返すことが出来ず自転車操業。
全部返済するまで数年かかり、返済終了とともにカードを切り刻み、とてもすっきりした気持ちになったのを覚えている。
その後数年はクレジットカードなしで何の問題もなく生活できた。
でもネット通販が当たり前になってきて、またクレカを作ることにした。
まずは審査が甘いと評判だった楽天カードに申し込み、問題なく作れた。
その後数年たち、東南アジアに行こうかな?と思ったときに、JALのアメックスカードを作った。
飛行機なんて乗る予定はそれしかないのに。
しばらく経ってからメインのカードが欲しいと思い、三井住友VISAカードに申し込んだら奇跡的に発行。
なんだか面白くなってきて、育てるクレカを持ってみようと思い、JCBカードにも申し込む。発行はされたけれど、限度額30万くらい。三井は最初から70万くらいあったのに、審査って全然違うのね。JCBカードも三井住友カードも、育てていくとより高ランクカードへのインビテーションが来るらしい。出世魚だ。
でもカード多過ぎ!と思った僕は、使っていないJALカードを解約した。
その後使いすぎることもなく、三井をメインに適度に使った。
おとな!って思ったのは38歳のとき、三井さんからゴールドカードのインビテーションが来て、ゴールドカードを持ったとき。
フリーランスだし自分を追い込むため、取引先と会食等あったときに舐められないため、と自分に言い訳をして、ただ持ってみたかったから取得。
さらにその2年後、プラチナカードのインビテーションが届き、完全にオーバースペックで年会費の無駄ということはわかっていたけど、一生に一回くらい持ってみるか、と取得。
ゴールドもプラチナもパルテノンの券面がとってもかっこいい。なのに!数年前にデザインが変わりとても残念。持っている満足感が10分の1くらいになってしまった。
もちろんプラチナカードなんて宝の持ち腐れ。レストランとか演劇とかの予約もコンシェルジュに電話すれば代わりにやってくれるらしいけど、コミュ障がそんなの使えるわけない。僕にとってはただ限度額が高くて年会費が高くて券面が黒いだけのカード。空港のラウンジなんて、どうしてわざわざ空港に早く行ってそんなところで時間潰すのかわからない。大丸東京店にもラウンジがあって、ノマドワーカーの時に一回だけ行ったことがあるけど、あえて行くほどではなかった。このカードはもっと遊びも仕事もガンガン頑張るエグゼクティブ向けであって、僕のようなコミュ障庶民にはネコに小判なのだった。
レジで出すときに、ちょっと「見て見てー、黒いの」って言いたくなることがたまにほんの少しあるかもくらい。初台に住んでいた頃は東京オペラシティの成城石井で、レジの時だけ脳内セレブおじさまごっこをして楽しんだ。口調も「いらないです」じゃなくて「結構です」とか、ちょっとかっこつけて。コロナ禍以降は店員さんにカードを渡すこともなくなったからそれもない。
でもまあ、ちょっとランクが高いクレカを持ったときは、社会に認められた感じがして、少し大人かもって思えた出来事。
実はフリーランスでも平均年収程度でも持てちゃうカードだったけど。
僕が持ってるんだから。
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