人間関係リセット

 人間関係には、ある程度のグループがある。

・家族
・中学校の友だち
・高校の友だち
・大学の友だち
・地元の友だち
・バイト仲間
・仕事仲間
・サークル、習い事
・ネットの友だち
・常連のお店関係
などなど。

僕が中学生のときは、中2で転校したこともあって、小学校とかご近所の人間関係グループはいなかった。転校しなくてもほとんどいなかったけれど。
転校したばかりのときは少し不登校だったから、「家族」グループだけが世界のすべてだった。
中3になると友だちができて、「家族」「中学の友だち」の2グループになった。
高校生になるといきなり増えて、「家族」「中学の友だち」「高校の友だち」「高校のクラスメイト」「不良の連中」「バイト関係」となる。
もちろん重複している人もいる。
ラーメン屋のバイトは高校の友だちと始めたし、そいつは「不良の連中」ともつながりがあった。
だけども僕は、グループとグループの接触が嫌だった。
特に「家族」と「その他のグループ」。
おそらく、グループ毎に被っている仮面が違うのだ。
だから、2つ以上のグループが鉢合わせるとどの仮面を被っていいのかわからなくなる。

高校時代にラーメン屋でバイトをしていて、バイト先に弟が来たことがある。僕の愛犬を連れて。
僕と弟はそれほど仲良くない、というかこの時は家族とほとんど話さず交流もなかった。
このお店のオーナーの息子と、弟は同級生だった。
バイト先の仮面を被った僕しか知らないオーナーの息子と、家での僕しかしらない弟。
突然来た弟にどう対応していいのかわからなかった。
愛犬に味を付ける前の茹でただけのチャーシューを食べさせたのだけ覚えている。

中学時代にそこそこ仲良くなった友だちが4人いた。
そのうちの1人は同じ高校に進学して、別のクラスになった。
勉強もスポーツも出来るさわやかイケメン君だったので、同じ高校なのが少し意外ではあった。僕よりずっと頭がいいと思っていたから。
僕はその後高校とは関係ない地元の不良たちと付き合い始め、よくない方向に変わってしまった。
一方彼は、自分を飾るというか、良く見せようとするのを卒業したのだろう。いや、僕からそう見えていただけで、もともとそんなことはしていなかったのか。彼は客観的にはオタクとみられるような友だちと仲良くなり、とても楽しそうに毎日を過ごしているように見えた。
僕は彼をどこか羨ましいと思いながらも、会うことも遊ぶこともなくなってしまった。他の3人とも、次第に会うこともなくなっていった。なぜか、不良たちといるときに彼ら中学時代の友だちと会ってしまうのが、とても嫌だった。なにも気まずいことなんてないはずなのに、なぜか避けてしまう。

高校1年生で仲良くなり、後に料理の専門学校を経て料理人になった料理人君という友人がいた。一緒にバイトをしたり、高校時代には一番つるんでいたといってもいい。
でも、なぜつるんでいたのかがわからない。いつも通り流されていただけなのか。
明るいキャラで、クラスに1人はいるお調子者の彼。でも彼の笑いは、誰か人をネタにする。
今思えば常に僕にマウントを取っていた。
顔がシュッとしている僕のアゴをいつもネタにしていて「今日も尖ってる」「鋭い、切れる」「アゴ」とか、黒板に逆三角形を書いて菱形の目を付けて僕の似顔絵を描いたり。「顔面凶器」と言っていたのも彼だった。
彼は記憶力が凄い。ほんの些細な出来事でも覚えていて、僕は逆に何も覚えていない、というのも多かった。一緒にいるときに会ったことがある人でも、僕はまったく覚えていない、彼は覚えている、とか。で、それを揶揄される。それに周りのことをよく見ているし、人のこともよく見ている。彼はもしかしたら、僕以上に僕のことを分かっていたのかもしれない。
僕がバンドを始めると「お前にバンドなんてできんの?」と言ってきたり。僕のコミュ力の低さをよく知っているから純粋に出てきた言葉だろうけど。高校を卒業してからも、共通の友人がいたから会おうと思うわけでもなく会ったりすると、「どうぜお前に〇〇」のようなネガティブなことを言ってきたり。あー、これモラハラ夫だな。
一緒にバイトをしてバイクも乗って高校を卒業してからもたまに遊んだりもした。高校時代の思い出の多くには彼がいたけど、20過ぎてからやっと気づく。彼と会うのは面白くない。何か言ってくる。嫌な気持ちになる。たぶん向こうも同じだったのだろう。彼からしたらなぜ僕とつるんでいたのか分からなかったんじゃないだろうか。もともと合わなかったんだろう。次第に会うことはなくなった。

その共通の友人が、同じく同じ高校だった車好き君。
父親が自動車整備工場の工場長で、自身も根っからの車好き。仲良くなったのは高校3年半ば以降だったか。ターンテーブルを買ってDJしたり、ミニカーを集めたり、スニーカーを集めたり、スケーターをやったり、文化祭でバンドしたり、ベスパに乗ったり、ローライダーになったり、ホットロッドに乗ったり、とにかく陽キャ。大学に行っていたら間違いなくウェーイになっていただろう。
僕が料理人君と会わなくなってからも彼とは緩やかな友人関係が続いた。結婚したときは式は挙げず、料理人君が働いていたお店で結婚パーティーをやった。娘さんが産まれたときには、高級百人一首を贈り、当時僕が住んでいた初台にあった提灯屋さんで娘さんの名前が入った提灯をオーダーしてプレゼントしたりと、友人関係を続けていた。彼はなぜか提灯が好きで、旅行に行くと「京都」とか「横浜」とか書いてる小さな提灯を集めていた。
毎年お誕生日になると、必ずおめでとうメールが来る。こちらからも送る。あけおめメールも必ず。そういった事が、僕は誠に勝手ながら、とても面倒くさかった。彼はとてもいい奴で、僕が仕事が無いときには自分の整備工場でバイトするか?と言ってくれたり、友だち思いで、気が効いて、明るくて、それなのに僕はだんだんと避けるようになってしまった。
彼が自分で会社を作って整備工場を始めるとき、定款や登記を全部僕がやってあげた。僕は心のどこかで「やってあげた」と上からになっていた。その流れでホームページを作るか、となり、僕の本業だけど無料で作って「あげよう」と思った僕は、当時フリーで忙しくしていた中、ホームページの撮影とかヒアリングとか打ち合わせのため、時間をとって約束をして東京から地元まで帰った。そこで彼は、ほとんど何も準備をしていなかった。きっと彼は、ただ僕と久しぶりに遊ぶということを楽しみにしてくれて、他の事は二の次だったのだ。でも僕は上から目線で、おそらく当時僕は調子に乗っていたのだ。「意識高い系」というかフリーになって2〜3年くらいでそれなりに大きなお仕事もいただいたり、「忙しく働くプロフェッショナルなフリーランスの俺」という虚像に酔っていたのかもしれない。彼がほとんど準備をしていなかった事で、僕はきっと「この忙しい自分がタダでやってあげようと時間を割いてこんなところまできたのに」と、自分勝手に腹を立てたのだ。プロフェッショナルだというのであれば、彼が準備をしていなかったのは自分の仕事が中途半端だったということなのに。
そして、僕は彼から来る連絡を無視してしまった。誕生日にくれるメールも無視。それでも頑張って数年送ってくれたけれど、次第に連絡も来なくなり、縁が切れた。
同じように勘違いして調子に乗り大切な縁を切ってしまったことは、以前にもあった。ラーメン屋の店長をしていたとき、高校時代の友人の結婚式にご招待いただいた。それなのに、僕は仕事を理由に断ってしまった。お店なんてどうとでもなるのに、たぶんこの時もぼくは調子に乗っていたのだ。

大人になってフリーターになり仕事を転々とし、場合によっては友人も出来た。そして、なぜか人間関係をリセットし続けてきた。電話番号を変えたことさえ何度かあった。あえて切らなくてもみんな自然と僕から離れて行くのに、自分からも切りまくっていた。大して友人も知り合いのいないくせに、誰も知ってる人がいないところに行きたい、と思ったり。仕事と同じで、人間関係すら逃げて転々とする半生だった。

警備員のバイト時代に出来た友人がいる。
2歳年下で、草彅剛君に似ているツヨシ君。なかなかのイケメンだ。
彼も明るくて、人見知りもしないし、柔軟というか、何にでも興味を持つ。僕とのつながりで車好き君と友人になると、似たような古い車を好きになり、バイト仲間の天才バンドマンと仲良くなると、そっち系の音楽を聴いたり、誰かに影響されてスケートボードを始めたり、人生を楽しんでいた。出会ったときには高校時代から付き合ってる彼女もいて、僕とはいろいろと正反対なのに、なぜか馬が合ってよく一緒に遊んでいた。
結婚して披露宴にも呼んでくれて、すでにベジタリアンになっていた僕のためにメニューもベジタリアン仕様にしてくれた。この時食べた柿のサラダが今まで食べたサラダで一番美味しかった。結婚相手は仕事関係の知り合いのつてで出会ったらしく、披露宴では僕の知らない彼ばかりで少しだけ寂しく思ったことを覚えている。結婚生活も順調で、広い庭のあるかわいい家を買って、大きな犬と住み始めた。彼も僕も自分から連絡をするタイプではなく、気づけばもう何年も連絡を取っていない。

人は変わっていく。
自分もみんなも。
進化と同じで、いいとかわるいとかじゃなくて、ただ変わっていく。
わざわざリセットしなくても勝手にみんないなくなるのに、なぜリセットし続けてきたのだろう。
もしかしたら僕は、誰かにリセットされる前に、自分からドアを閉めることで、傷つくことから逃げていただけなのかもしれない。
次に会ったときは、「元気だった?」とただ純粋に再開を喜べる人に、僕はなっているだろうか。

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