突然におった靴下

 あの日ベッドの下に放り投げたエッセイコンテスト投稿という靴下が、

突然においを発した。

コンテスト主催の出版社さんから電話。
普段は知らない電話番号なんて出ないのだけれど、この日はどこだか忘れたけどなんらかの必要があって登録したところがあって、検診だったかか保険屋だったか、ちょうどいいタイミングで掛かってきた電話に、そこと勘違いして出てしまった。

電話越しに出版社の営業さん。
いわく

「今回は惜しくも落選だったけれど、とても素晴らしい作品でとても惜しい」
「この作品を推している社員もいて、私もそのひとりです」
「コンテストと関係ないく出版されたいという気持ちがあれば、社内で会議にかけさせていただきたい」
などなどべた褒め
さらに、
「どのくらい書かれてきたのですか」
「どんな読者に読んでもらいたいですか」
など、作者心をくすぐる言葉の数々。

電話を切ってからチャッピーに聞くと、必ず費用負担を確認してください、とのご忠告。
調べると、「コンテスト商法」なるものがあるらしい。

主目的は、自費出版のお客さんを集める集客。
コンテストはもちろんきちんと開催して、受賞もちゃんとある。
数百人・数千人の落選者は、良質な見込み顧客だ。
みんな作品を書いているし、多少は出版したいという気持ちもあるはずの人たち。
とても頭がいいやり方だし、違法性はまったくない。

調べると、曝露というかコンテスト商法に詳しい有識者が書いた記事とかもあって、それによれば「作品を読んでるのは外注、営業は外注があげてきた資料を読んでるだけで、作品は読んですらいない」とか。

そして僕のももちろんコンテスト商法だったようだ。
「とても素晴らしい作品なので今回は特別に〇〇で、〇〇円割引します」
のような営業資料が送付されてきた。

出版には、「責任出版」「共同出版」「自費出版」の3種類があるらしい。
僕のような素人が思う「出版」は責任出版(商業出版)で、費用もマーケティングも流通も全部出版社がもつ。
それだけの費用負担をしてもペイできる、利益がでる作品ということになる。

共同出版は、費用は作者も出版社も負担する。
流通等は出版社がもつことが多い。
実質的には、自費出版の営業トークとして「共同です」ということも多いらしい。
出版社からすれば、利益がでる作品だとは考えていないということ。
作者からの入金ありきで赤字にならず利益も出る程度の作品。

そして自費出版。
これは作者がほぼすべての費用を負担して趣味で出版するもの。

さて、今回の僕の件は、おそらく共同出版ということになるのだろう。
費用の内訳が書いていないから、出版社側が費用負担をしているのかどうかは不明。
流通は出版社だし、大手書店の棚に必ず陳列されるらしい(有識者によれば棚ひとつ自由にできるように書店から権利を購入しているらしい)けど、その費用も全部作者が負担しているのかもしれない。それならほぼほぼ自費出版。

つまり、その作品にはビジネスとしては出版するだけの価値がないですよ、ということ。
売れると判断したのであれば責任出版してでも出版したいはず。

1冊あたり数千円で、本を買うのでは無く、本を出版する。
作者が数千円負担して、出版する。

妻はなにやら腹を立てていたけれど、僕はまったく腹が立たず、むしろ面白かった。
「講評」はAIに聞くのと大して変わらない内容だったけれど、どこかの誰かが読んで真面目に講評してくれた(その誰か、もAIかもしれないけど)。

もし出版したいという気持ちが強くなったら、一生懸命作品を仕上げて、その作品に適した出版社さんに自分から持ち込もう。
昔ながらのやり方で。
神保町を彷徨い歩いて。

それか、Amazon電子書籍でさくっと売ろう。

コメント